人をだます者は人でありながら、それは容易なものに非ず。陰にあることから、恨みに思いやすく、執念深い。そんな恨み心で相手に取り付き、災いと祟りをもたらす。
なるほど、狐も人も恨みに心が曇れば代わりがない、ということか。
王子の狐
狐が人間に化けたところを目撃した男は、逆に狐を化かしてやれと企てる。
人間を化かすはずの狐が年増のいい女になったものだから、男は小料理屋に誘う。
女にたらふく飲ませて寝かせた空きに、串鳥と卵焼きを五人前を土産に、「勘定は連れに」で帰っちゃった。
翌朝、起こされた女は驚いて狐に戻ると、その女中も店中も大騒ぎ。大勢が踏み込んで狐をひっぱたいたが、狐は屁をして逃げていった。
屁は臭いから、これは「疑わしい、あやしい」という意味で、逃げた犯人は狐だったんじゃないか、という暗示であろう。
後半は「狐はお稲荷さんのお使い姫だから詫びを入れるしかない」と言われ、男は稲荷にいた子狐にぼた餅を渡す。
しかし子供が持ってきたぼた餅を母狐が、「馬の糞かもしれない」。
最後も疑わしいは「臭いがする」という暗示が効いている。
人を疑う者は謝罪も拒み和解はできず、ただ仕返しをたくらむだけだ。
だました者は疚しい心を隠して、祟りや災いを避けるために神仏に祈るのみ。
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