2010年2月7日日曜日

メディアの衰勢

 映画が劇場を衰退させ、テレビが映画を衰退させ、ネットがテレビを衰退させ、の因果応報かと思いきや、どうもそうではないらしい。

映画館の現状と将来像
 映画全盛期である1960年頃では、年間入場者数は10億人前後で推移
 1996年には、全盛期の約10分の1の1億1千万人にまで減少し、1億人を割る寸前
 1998年には1億5千万人台にまで回復


 この情報が正しければなのだが、テレビの普及が直接、映画館の入場者数に影響したわけではないようだ。

テレビやパソコンなどの普及率をグラフ化してみる
1966年にはわずか0.3%だった普及率も急速に伸び、1972年には61.1%と半数を突破。1975年には90.3%と「10世帯のうち9世帯までがカラーテレビを保有」


 映画全盛期である1960年頃は、テレビは、まだ普及されておらず、1972年には61.1%と半数とは、全世帯での統計だろう。

西村雄一郎著「黒澤明封印された十年」
1966 映画館総数4,296館 入場者数 34,581万人
1969 映画館総数3,602館 入場者数 28,398万人
1970 映画館総数3,246館 入場者数 25,480万人
1972 映画館総数2,673館 入場者数 18,739万人
1973 映画館総数     館 入場者数 18,532万人
1975 映画館総数2,443館 入場者数 17,402万人


 映画全盛期10億人いた入場者数は、1966年には、すでに半数以下となっている。そして、1972年で1.8億人まで減少。この頃、テレビは全世帯の半数しか普及していないのだから、因果関係は成立してないことになる。

 テレビ局の減収がニュース記事になったのは、つい最近だ。

テレ朝、テレ東は最終赤字 民放4社減収 2009/05/15 21:05更新
景気後退で広告収入が落ち込んだことに伴い、複合施設「赤坂サカス」の開業で不動産収入が伸びたTBSホールディングス(HD)を除く4社が減収を記録した。各社ともコスト削減を進めたが、全社が営業減益となり、テレビ朝日とテレビ東京は最終赤字に転落した。



民放キー局、全社でスポンサー広告2ケタ減 (2010年2月5日19時22分 読売新聞)
デフレ
 在京民放キー局5社の2009年4~12月期連結決算が5日出そろい、フジ・メディア・ホールディングスを除く4社が減収だった。


インターネット
商用のインターネット利用についてはまだ歴史が浅く、概ね1990年代後半に入ってからである。2000年代初頭までは個人向け接続サービスの大半は低速なダイヤルアップ接続であり、従量制の課金が多くみられた。定額のブロードバンド接続サービスが低価格で提供され,爆発的に普及しはじめたのは2001年になってからであった。同時期に携帯電話でもインターネットへの接続サービスが提供されるようになり、携帯電話でのインターネット接続も一般化する。


 インターネットの普及は、2001年頃からとするなら、テレビの減収はやはり景気後退によるものだろう。

国内ネット普及率75.3%、光回線世帯は4割に--総務省調べ
 調査は2009年1月に、20歳以上の世帯主がいる世帯およびその家族と、常用雇用者規模100人以上の企業を対象に実施。それぞれ4515世帯、2012社の有効回答が得られた。
 その結果、インターネットの利用者数は9091万人、人口普及率は対前年比23ポイント増の75.3%となった。また、世帯におけるブロードバンド回線の割合は73.4%(対前年比58ポイント増)で、このうち光回線は39.0%と前年比7.7ポイント増と大幅に進展した。


 ブロードバンド回線にしも、まだ7割、光回線にしても4割も普及していない。

 第一次オイルショック、1973年。
 第二次オイルショック、1979年。
 1972年の映画館乳所者数、(全盛期)1.8億人。

 映画の衰退は経済活動とまったく関係がない、ということだ。
 テレビ局は今までのメディアとは違って、企業というスポンサーに大きく依存していたので、景気後退による影響も大きかった、ということだ。

 テレビの普及を待たずに映画は衰退していき、ネットの普及を待たずにテレビが減収していく。テレビが9割も普及していたのに、ブロードバンド回線にしも、まだ7割という普及率にして、テレビ局の減収は景気後退が原因だという。

 元々、テレビは経済活動の発展のため、という国策での許認可制である。経済活動が後退してしまっては、広告収入が得られず、減収になるのは当然だ。独自に収益を上げる商品がないところから衰退が始まるはずだ。

 テレビメディアが政治に影響を与えたのなら、皮肉にもそれは自分で自分の首を絞めたことになる。
 オタク人気に注目した麻生政権にしても、政権交代に注目して誕生した民主党鳩山政権にしても、テレビ局の絶大なる影響力があったればこそと、テレビ関係者が思っているのだったら、それこそ因果応報というものだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿